その時。音楽家の身に何が起こったのか。

音楽を創る事で、音楽家の身に何が巻き起こっているのかを綴るブログ

ポータブルCDプレーヤーなんて深みを知る

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ニッチの皆様今晩は!
ニッチ無名音楽家高宮です。

写真は、左上から時計回りに
SONY D-223
SONY D-22
Panasonic SL-XP50
Panasonic SL-S30

です。
このご時世にそぐわぬ1988~1990年頃の

ポータブルCDプレーヤー。

これがたまらんのです。

そもそもCDって買う事自体少ないって方も結構いるでしょうが、私は、未だにCD買って聞きますし、自分が音源を制作した際はCDアルバムとして販売しています。
ポータブルの音楽再生装置といえば、デジタルオーディオプレーヤーやMP3プレーヤー、スマホ等。かなり良い音で聴けるのが現在デジタル時代。
どうしてこんな古臭いもんで聞く意味あるんでしょうか。
高音質性や再生持続性や曲数で勝てると思ってんのか!
勝てるわきゃありません。

但し、 同じ土俵なら。

きっかけはこうでした。

家でCDを良い音で家で聞く分には家のオーディオで聞けば良いのですが、ふと「持ち運べる音の良いCDプレーヤーを持ってないから欲しいな」と思い、ポータブルCDプレーヤーを探し始めました。
ポータブルオーディオプレーヤーとなれば大体最新機種がスペックやらシステムにおいて優れてそうですが、実際はそうじゃなかった。
だってポータブルCDプレーヤー市場なんてね。もう廃れてますよ!はい。
でかい家電ショップで探してみようもんなら、隅っこの方に「まあどうしてもCDで聞きたい奴なんてのがいるなら聞けばー」てなくらいに、最新機種が置いてありました。
音の良さじゃなく多機能性が売りのようで、これは私が探してるもんじゃない。
さあここからディグっていくんですが、一番良いやつを探すってなるとどんどんと時間を逆行して遡る事になります。ある種タイムスリップする事になるわけです。
つまり現在のように廃れた市場じゃなく、バッチバチに競合ひしめき合って「いいもの」を創ろうとしてた時代のもの。その時代のものが一番良い音がするはずだ!って探す事に。
このタイムスリップ感を味わうのが何とも言えず愉しい・・・。

タイムスリップした先は昭和63年~平成に変わったあたり。バブル好景気に皆ブチ浮かれ上がってた時代。
1982年にこの世にCDが誕生して6,7年後の世界。
世界初のCDプレーヤー

CDP-101

はCDが誕生した同年1982年、つまり昭和57年に日本のSONYが168000円で発売。
当時としても高価で、音質にこだわるクラシック、ジャズファンは購入したが多くの人は馴染みのあるレコードを聞いていた。より多くの人が聞けるように5万円の小さいCDプレーヤーが創れないかと経営陣は考え技術班を中心に日夜葛藤していた時「これでCDプレーヤーをやってみてくれ」と、ゼネラルオーディオ事業部長の大曽根幸三が13.4cm四方の正方形で厚さ約4cm、CDジャケット4枚分の厚さの木型(木片を加工したもの)を部下に示し、「中にバッタを入れようがセミを入れようが構わない。とにかく音が出るようにしてくれ」というむちゃくちゃな振りをする。居合わせた面子は皆笑ってしまったらしいが、

この大きさこそ、皆が喜んで使う製品となる

と信じ切って全力で走り出す。試行錯誤につぐ試行錯誤の末に世界初のポータブルCDプレーヤー

D-50

誕生。価格は49800円。
とんでもない赤字。原価率200%だったらしい。しかしこの製品が爆発的に売れ低迷していた業績が上向き一年半で黒字に転換出来たようだ。
そしてやってくる全盛期。新しくていいものを生み出そうとするエネルギーとバブルに乗って使えるお金が沢山ある為良質な素材をガンガン物量投入したのが功を奏し、素晴らしいものが生まれていった。

こう歴史を見ると、そりゃあ良いものが生まれるわなぁと妙に納得させられてしまいました。
そしてまた面白いのがポータブルCDプレーヤーって、SONYPanasonic、pioneer等の日本メーカーの物ばかり。海外にはニーズが無かったのか海外のメーカーの物ってあまり聞いた事がない。CD自体日本では未だに需要があるけど、何年も前から海外ではストリーミングが上回ってる。
国土や風土や生活スタイルが違う所では、日本の怪しげな代物は馴染まなかったって事かも知れません。世界的にマジョリティーは取れなかった事、これって実は結構ポジティブな事に思えます。
だって、間違いなく「いいもの」が日本だけにあるって魅力的じゃないですか。世界のどこかに住んでる人がひょんな事から興味を持って、探し当てた時に素晴らしい体験が出来るなんてちょっと素敵じゃないですか。そんな体験をして、「あの何か怪しげなもん作ってる日本ってどんなトコだ。行ってみたい」って思う人も少なからず出て来たら楽しい。
ポータブルCDプレーヤー。もはや立派な日本特有の文化なんじゃないでしょうか。

さて機体を探し始めた私ですが、どうにもネット上に情報が少なく、実店舗で色々な機種の音の良し悪しを試聴して判断する事が出来ない状況に困惑していましたが、どこにもニッチな方はいるもので、とある方がポータブルCDプレーヤー専門のサイトを運営されていて、そのマニアック極まる情報にワクワクさせられ探す手助けになりました。
その後、いざオークションサイトへ。音は聞いてないのでここは賭けです。
そうして現段階で辿り着いたのが、最初の写真に映る4機種。
それぞれ音のタイプが違い、色々な側面から音源を聞けます。
全ての音がとにかく綺麗に聞こえ調和していて、目を瞑れば楽器の音が目の前で美しく響いてる。そんな錯覚するような、一番のお気に入りSL-XP50。低音がヤバくて音の迫力が笑っちゃうくらい凄い、ライブ音源聞くのに最適なD-22とか。
色々なCD音源を、最適なCDプレーヤーで良い音で聞く。この体験がどうにもたまらんのです。

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この黒い食パンみたいなやつが、Panasonic SL-XP50

まあ古い物だし今の時代感で考えちゃアウト
ポータブルとか言っといて、ちょっと何かに当たっただけで電源落ちますよ。
また一曲目から始まりますよ。音質を最優先に考え創られているので衝撃に関しては二の次ですよ。笑

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もうね単三電池入れる所のフタなんて最初からないから、ガムテですよ。

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これ違う機体ですが、えぇ勿論、中にもテープ貼りますよ。
音締まるからね。
この方法は個人的にあまりオススメしませんが。

最高音質で何万曲もストリーミングで聞くのも一興なら、いちいち一枚一枚プレーヤーにCDをセットして聞くのも一興。
後者の愉しみは、ジャケットやブックレットや盤のデザイン性に触れられる事や、無くしてなければ忘れても家のCDラックを見て思い出して再度聞ける事。反面家のスペースが埋まっていく...。
ストリーミングは高音質で膨大な数の音楽をストック出来てシーンや気分に合わせすぐに曲を変えられる。反面自分の脳は膨大なストック数を覚えてられない。クラウド上のどこかに残ってたとしてもその音源の存在を忘れたら二度とその音楽に再会する事が出来なくなってしまう。

形あるものは無くせば存在が消え、形ないものは忘れたら存在が消える。

音のデータを物に変換したCDで聞く、直接データを聞く。
データに物理的な重さが有るのか無いのか、そんな単純な違いの裏側には人が音楽を聞く深さの差があったりするのかもなんて気もしたり。
音楽が好きな人は世の中にごまんといて、一曲一枚の音源に対しての価値観は皆それぞれ。
私の場合は深く音楽・音源と関わりたいって思ってるので、胸を打った音源は、出来るだけ物体として所有したいなぁって思います。世代的な考え方かもしれませんが。

ただ言える事は、
『深みを感じるものを所有する』それって何だかとても心地良いって事。
その対象は市場価値がなかろうが私情価値で観る。
ポータブルCDプレーヤー
まだまだニッチな深みにハマっていきそうです。